第91回 このところどうにも政治が雑である2025:05:04:09:28:19

産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理

というか、役人が暴走しだしているのではないかとも思える。
現政権が財政規律を重んじる方針に乗っかっているのか。財政規律を重んじようが、どのような方針を政府が掲げたとしても、財政のもとは公金であり、国民が支払う税金なのだから、国民に還元されるべきものである。

高額療養費制度について取材するにあたり、改めて、今年1月に厚生労働省が公表した「高療養費制度の見直しについて」という資料を読み返してみた。
見直しの前提として、医療の高度化により制度の総額が年々増加したこと、過去10年で物価上昇や賃金上昇によって世態収入の増加がみられること、などとしている。まるで、世間の実態をよく調査せずに思い込みで書かれた下手な大学生のゼミ論文のようだ。そして、とどめのツメの甘さを露呈しているのは、最後の一文。「(見直しにより)家計や受療行動に与える影響については今後検討していく」とある。

この点については、首相が国会で「事前に患者会の意見を聞くべきだった」と謝罪しており、このことをもってしても、机上の空論による数字合わせのための極めて雑な制度設計であったといわれても仕方がない。

そしてここ数日間、話題になっているのが、障害年金の不支給が倍増している問題である。
全国の新聞社等に記事を配信している共同通信によると、年金機構の障害年金センターのトップが交代したと同時期に審査が厳格化したとある。この記事はネット配信もされ、様々な声が寄せられているが、要するに、そもそも支給・不支給の明確な審査基準が存在せず、自治体によって実態が異なっていることへの疑問だ。

われわれは何のために、保険料や年金を支払っているのか。困ったときのセーフティーネットが機能することへの期待があるからだろう。病を得て、制度や年金の支給を求めるのは、命に係わるからだ。それを世間知らずのおめでたい役人の差配で左右されるとは、先進国で起こっている出来事とは思えないレベルの低いお笑い種だ。

<2025/5/4 掲載>