第79回 がん治療とリハビリ2024:04:06:14:00:45

産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理

以前も本欄でふれたが、がんの治療に際し、治療の前後にリハビリを行い、体力の回復に臨むことにより、がん治療の効果があがり、体力を維持することで、がん治療の選択肢の幅が広がるということだ。

いってみれば、ごく当たり前のことなのだが、専門の理学療法士にきくと、制度に欠陥があり、まだまだ、広く知られておらず、医師の認識も高くなく、がん治療にあたり行うリハビリの実践をする理学療法士らの人材も不足しているのだという。

制度の欠陥というのは、入院中のリハビリには診療報酬はつくが、退院して外来や在宅でがん治療を行う場合、診療報酬の対象にならないということだ。また、各種のがんのなかで、標準的な治療方針を定めたガイドラインで、治療の効果を高めるリハビリの必要性にふれていない、がん種もあるのだという。

人材不足については、がん治療の一環としてリハビリに関わることの医療者は、医師、看護師、理学療法士らのチームで研修を受けることが求められており、病院内で、そのチームを維持することの困難さにあるという。ただでさえ、がん以外のほかの疾患にあたる理学療法士らが必要とされるなかで、がん治療のリハビリに関われる人材が自ずと限られてしまう。

こうした状況のなか、日本癌治療学会では、がん治療とリハビリについての専門科の設置が決まり、公費助成により、がん治療におけるリハビリの効果を調査研究する取組が、全国の大学病院などで進められつつあるのだという。

がんの取材をしていていつも感じていることだが、こうしている間にも、がん治療を受ける人は毎日増え続けている。行政はとかく、数字やデータで政策を進めがちだが、命に直接かかわることについては、自分が、自分たちの家族が不利益を被る立場を想像して、取り組んでほしいと思うのだが。

<2024/4/6 掲載>