第75回 くすりもいろいろ2023:09:04:07:16:40

産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理

くすりにも、いろいろある。
化学療法、漢方、手当て、日にち薬...。
そのどれでもない〝くすり〟を最近取材した。

そのくすりは人体にぬるものではない。家とか建物内部にぬるものだ。
神戸市兵庫区に今年3月オープンしたがん相談のためのフリースペースで、いわば「治験」が行われた。
塗料を製造・販売している会社が、光に反応し、抗ウイルス・抗菌・消臭効果のある塗料を提供した。
コロナの経験を経て、今年になって販売が開始されたもので、無色透明であり、既設の壁に塗ることができる。壁紙が貼ってあっても、その上から塗ることができる。

塗料の提供を受けたフリースペースでは、スタッフが塗料会社の指導のもと、相談室やトイレ、廊下の壁などを塗った。2㌔の塗料を、スタッフが1時間ほどで塗り上げたそうだ。
この塗料の会社は、盲学校にも同様の社会貢献プロジェクトを提供したといい、以降、毎日、壁を伝って移動する生徒にための消毒作業が大幅に軽減されたという。
フリースペースでは、患者さん以外にも、家族や友人などより多くの人が気兼ねなく、集うことができるだろう。

ところで、フリースペースと塗料会社を結びつけたのは、フリースペースを利用しているがん患者さんだ。塗料会社の元社員で、在籍中はこの塗料の販売を担当していたという。
がん患者さんを前向きにさせる姿勢がこのフリースペースにあるということだろう。

<2023/9/4 掲載>