第68回 医療もDX化の時代へ2022:11:06:07:14:38

産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理

現在、ある在宅医療ネットワークの取材をしている。
東京、大阪、福岡と広がりつつあるネットワークの核となっているのは循環器内科のクリニックだ。今後、高齢化に伴い、心不全の患者が爆発的に増加する「心不全パンデミック」が発生するといわれているが、そうした状況を避けるため、治療の現場を病院から在宅医に移行させ、医療的管理、生活管理、リハビリを手掛けている。

その推進力となっているのがオンライン診療だ。365日24時間、看護師が在宅療養を続けている患者、家族の相談を受け付けている。そのための、拠点を都内のクリニックに昨年から設置した。

オンライン診療は、コロナ感染者の在宅療養を機会に保険診療として定着しつつある。
このネットワークもコロナの在宅療養者の管理を受け入れた経験を生かした。
もっとも、オンライン診療と言っても、まずは外来で診断そして、在宅療養者のもよりの病院との連携を確保したうえでの話だ。さらに、このネットワークでは、オンライン診療を確かなものにすべく、日課のようにおこなわれる症例検討会、海外の論文研究、医療者同士の相談ネットワークの利用を、SNSなどを通じて構築している。

クリニックの主宰者いわく、こうした動きは「医療のデジタル化」にあらず、「医療におけるアナログとデジタルの融合」であり、デジタルは、患者といつでもどこでもつながれる、
「(病院に通院しなければならなかった)物理的距離を超え、患者や家族と精神的にいつでもどこでもつながれるアフターコロナの医療革命である」と主張している。

今後、数十年間の高齢化の圧力は多くの課題を顕在化させつつあるが、確かに、人と人のつながりを再生させつつあるようだ。

<2022/11/6 掲載>