第67回 先進技術=医療の進歩か2022:10:02:11:15:40

産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理

このところ、最新治療の取材をたてつづけにした。
最新治療の取材をするときに、必ず聞く質問がある。
「この技術により本当に医療の向上につながるのか?」

最新治療が導入されても、いっせいに医療機関に導入されるなんてことはありえない。
医療機関どうしもしくは、自治体どうしの競争の旗印になりかねない時もある。
もちろん、最新治療を受けられる機会は限られるわけで、地域間格差により、最新治療に触れられない患者は不利益をこうむる。最新治療が喧伝されればされるほど、患者の期待値は高まるが、誰もがその恩恵にあずかれるわけではないから、落胆も大きくなる。
というような、いじわるな質問を投げかけてみる。

今回、取材対象となった2人の医師は以下のように答えた。
近年の医療の進展はめざましい。激しいといってもよいぐらいだ。2年前の常識が通用しない。ただ、こうした医療の進歩は確実に、低侵襲つまり、患者の負担を軽減する、生活の質の向上を目指している。である以上、自分の技術に固執している暇はなく、新しい技術を取り入れざるを得ない。実践すればするほど、その経験は機器の改良に取り入れられ、小型化し、どこでも、誰でも扱えるような性能とデザインになっていく。
ましてや、コロナでオンライン診療の広がりに拍車がかかり、一部の達人だけで技術を独占する時代でもなく、オンラインで地方の医療機関でも治療できるようになりつつある。加えて、働き方改革で、特に医療機関は厚労省の労働時間短縮のターゲットになっているから、
一部の神の手に手術、治療が集中するブラック・ジャック現象は消えつつある。

現代の医療の進歩はこうした仕組みの中で動いている以上、最新治療の導入に取り組まざるを得ないのだと、2人の医師は口をそろえた。
そしてこうも言った。一番の患者の敵は「不勉強なベテラン医師!」...。

<2022/10/2 掲載>