第59回 今年は、検診を受けよう2022:01:26:21:54:12

産経新聞大阪本社 地方部編集委員 北村 理

標題どおりの発言が、がん治療にあたっている医師たちからあがっている。新型コロナウイルスの感染が拡大した約2年ばかりの間に、がん検診を受ける人の数が激減したからだ。
診断数の減少が、がん種によっては、コロナ禍前後で、1割以上にのぼっている。それに伴い進行がんの増加が顕著となっており、医師たちから標題のような言葉がでている。
日本人の罹患数でナンバーワンとなっている大腸がんでは、進行した大腸がんが見つかるケースや、大腸の閉塞により緊急手術が必要なケースが増えている。
海外でもこの傾向は同じで、根治手術が1か月遅れると、生存率に影響があり、さらに3か月遅れると危険度は1・5倍になることが英国の論文で示されているという。

ここ数年、免疫療法、ゲノム医療、ロボット支援手術などの医療技術の進歩、手術、抗がん剤や放射線治療といった標準治療も多くの経験を経て、さまざまな組み合わせのパターンが試みられ、大きな成果をだしている。
しかしながら、がん医療の基本は「早期発見、早期治療」であり、効果的な治療の恩恵をこうむるためには、患者側の行動にかかっていると、医師たちは口をそろえる。進行すればするほど、いかに治療法が進展したとしても、自然と選択肢は狭まる。
女性に増加がみられるという大腸がんの検診も、女性医師による検診の機会も増え、内視鏡検査も痛みが少ない方法、検査前の腸洗浄も、抵抗感を少なくした方法が開発されていると、検診を行うクリニックはうたう。

オミクロン株が流行しているものの、コロナもそろそろ出口がみえてきたと、公衆衛生の専門家が口にしだした。今年は心機一転、「がん検診を受けようキャンペーン!」を自分に課してはどうかと、提案したいところである。

<2022/1/26 掲載>