第34回 組織運営はトップの資質がカギ2019:08:19:17:31:59

産経新聞社 社会部記者 北村 理

病院にせよ、企業、公的機関にせよ、組織と名のつくものは、その在りようがトップの資質によって大きく左右されることは古今東西の歴史が証明している。ちかごろは、「忖度(そんたく)」などいう言葉がはやり、組織運営に欠かせないトップの資質がゆがんでとらえられているが、本来、優秀なトップというものは、絶えず組織に変化を促し、正しい方向に組織を導く人物のことをいうのだろう。
過日、大阪国際がんセンターの松浦成昭さんにお話を伺っていてそう感じた。

松浦さんは外科医からスタートして、病理学研究、医療人材育成などを経験されている。いわば、臨床、研究、教育と、現在のがん医療を推進するうえで、すべての資質を備えているといえる。行動力も目を引く。
大阪国際がんセンターの前身である府立成人病センターの総長に就任以来、府内の国指定、府指定のがん医療を行っている病院すべてを回り、現場の意見を聞いて、病院長に改善を要請したこともあるという。60をこえるこれらの病院を回るのに、2年を要したといい、2回目の巡回視察をちかく始めるという。

その行動原理は、患者目線でのがん医療の実践にあるようだ。40年に及ぶ医師人生がスタートしたころは患者への「告知なきがん医療」が横行していた時代だったという。松浦さんは「せめてがんを悪化させない、なんとか転移を防ぐ方法はないか」と臨床から研究の道へ転身する。がん医療が高度化し、治癒率が向上し始めた現在は、それまでの経験を、がん医療の人材育成に情熱を傾ける。
 「ようやく患者さんの目線でのがん医療が実現できる時代になってきた」と目を細める。
がん医療の最前線にたつが、言葉使いはやさしく、表情は柔和だ。筆者は、失礼ながら、教育評論家の「尾木ママ」のようだと勝手に親しみを感じている。少しでも、松浦さんの活動を後押しできれば幸いだ。

 【わが家のナースの卵通信】はじめての前期の試験を終えてひさしぶりに下宿先の淡路から帰ってきた。「なんとか単位はとれた」と喜んでいたが、現在は病院実習のまっただ中。
高齢者とのコミュニケーションなる課題に汗を流していた。汗を流していたのは、実習そのものより、どちらかというとレポートの方。連日朝6時に起きて一日奮闘して、夜はうとうとしながら、レポートを仕上げていた。ちらっとテキストをのぞくと、「患者の家族へのケア」とかなんとか書いてあった。感心していると、「そんなんあたり前やろ」とナースの卵に怒られた。

<2019/8/19 掲載>