第8回「吹田がん情報コーナー」5か月の報告2014:11:21:06:01:26

「吹田ホスピス市民塾」会長 小澤 和夫

本年5月から毎月2回(13~16時)、吹田市役所ロビーでの「吹田がん情報コーナー」を開設しています。

1.コーナー開設の動機:
7年前から、毎年、「みんなの健康展」に参加。ブースで、200~250人の市民の皆さんと話し合う中で、多くの方が、
① がんと聞かされた時に、頭が真っ白になって、どうしてよいか分からなくなった。
② 必要情報を得たいと思っても、「どこで、どんな情報を得られるか分からない」、そして、「多くの情報があって、どのように考えたらいいか分からない」と、大変困った。
と、お悩みになっていることが分かりました。
そして、がん診療連携拠点病院(以下、「がん病院」)への相談は敷居が高くて、相談しにくい、と感じていることも。

吹田市のがんによる死亡者は、年750人(推定罹患者約1,900人)。'10年2月に「吹田がん患者・家族会」を発足させて活動してきているが、罹患者数から見ると、会まで来ていただく方は微々たる数字。

こうした事情から、「コーナー」を開設してこちらから出向き、がん患者・家族のお役に立ちたいと考えた次第です。

2. 5か月間(10回)の活動概略:
①相談対応者:
現在:4人。いずれも、会の役員で患者・家族会の長年の責任者クラス(うち1人は看護師)

※今後はPS研修(入門講座・基礎講座、各5H.計10H)を受講し、事例研究会に参加した者から選定していく。
基礎講座は、11月24日実施予定。医療関係の相談対応者も若干増える見込み。
将来は、20~30名にして、近隣のがん拠点病院(4か所)のがん患者サロンに対応する。

②相談の基本姿勢:
情報のお知らせが前提。それも、出来るだけ複数をお知らせして、選択・決定は相談者が。
医療についての具体的な相談は受けない。


(1) 相談件数 延べ24件 (一日平均2.4件)
(2)相談者性別 男性 8件、女性 16件
(3)相談内容(複数回答)

療養上の悩み 7件 
治療内容   2件 
医療従事者との関係 1件
緩和ケア   3件
精神的な悩み 2件 
経済的な不安 3件 
副作用    1件
その他     11件

(4)動機
市役所に来て、たまたま 16件 
人に聞いて    1件
市報を見て    4件 
その他       3件

3. 評価:
(1)相談者の感想:(抜粋)
 「話を聞いてもらって、落ち着きました」「相談に乗ってもらって、気分が明るくなりました」「こう
した相談する場所があると安心です」「長い間、悩んだり迷ったりしながら、色んな医療機関を随分歩いたが、情報を教えてもらって、一挙に解決しました。」「今後、皆さんと一緒に、市民塾で活動をしたい」(入会されました)

(2)内部評価:
 市役所にお見えになった市民の方が、看板をご覧になってお立ち寄りになるケースが多いです(「市役所効果」)。

お見えいただいた相談者の数は少ないが、その中でも、前記のような感想を漏らされるのを耳にすると、コーナーの有益性を強く感じ、これから益々強化・充実しなければと思います。

また、皆さんのお話を聞くにつけ、「医療者と患者・家族とのコミュニケーションの難しさ」を感じ、その橋渡しとしての市民の役割の大きさも感じます。

(3) 外部評価:
6月開催のピアサポーター養成講座(入門編:済生会千里病院で、22名参加)に、コメンテーターとして、大松重宏氏(兵庫医科大学医学部附属病院社会福祉学准教授)がボランティア参加いただきましたが、「市役所での相談コーナーを市民グループが開設しているのは、全国的にも稀有。各地で、披露していきたい」と、コメントされました。
その後の成人病センターでの「大阪がん患者団体協議会・公開シンポジュウム」(9月21日(日))で、基調講演された大松先生が、吹田市の事例を紹介されました。
 
4. 問題:
何といっても、相談者が少ないこと。今後は、
① 広報の強化:リーフレットを、病院・薬局など20か所以上に設置。市報掲載(3か月に1回)。 
② ボランティアの充実:対応ボランティアの層を厚くしながら、実際に即した勉強を推進する、
事で、活動の展開を図っていきます。

5. 今後へ:
実のところは、やや、おっかなびっくりでのスタートでした。
しかし、相談事例は少ないですが、がん患者・ご家族のお役に立てそうである事の自信が生まれました。
① 私たちならごく普通に考えることを、皆さんがとても迷い、悩んでいらっしゃる事
② それは少しの情報を提供して、じっくりと一緒にお話をするだけで、ご自身が結論をお出しになることが多い事(60分前後の相談が多いです)
③ 医療者とのコミュニケーションギャップが大きいので、それを埋めるお手伝いをすることで、双方の溝が狭まると思われる事
④ 市民目線でのお話合いが、随分、心を和らげることにつながる事
 などを実感しています。

私たちは、一層自らに厳しく研修・レベルアップをして、多くの患者・ご家族のお役に立てること
を願っています。

皮算用:20か所に置いて頂いたリーフレットから、毎月1人ずつの相談者がお見えいただくとしたら ⇒ 20×12=年240人。

以上


<2014/11/20 掲載>