第3回「ピアサポートについて(1)」2014:04:02:21:15:24

兵庫医科大学 社会福祉学 大松 重宏

私は、全国のがん患者会にお願いして調査をさせていただいたのですが、第一の疑問は、本当にがん患者会で活動をしているとメンバーが成長して来て、仲間をサポートできるようになってくるのだろうか、ということです。私はそう成長してくるにはある条件があるように思えるのです。
その前に、絶対、これは忘れてはならないことですが、がん患者会でのピアサポートは支え合うということで、仲間同士が対等であることが重要と思っています。

いつもサポートを受けている人も、よく考えてみると、自分の治療方法を仲間に語ることによって、一生懸命傾聴している仲間は、新しい治療方法を知ることになる。また、日常の苦しい生活課題を語ることによって、それもまた、傾聴している仲間は、その人なりの生活課題を知ることになる。その上、その人なりの課題を乗り越えた知恵や工夫もまた同様であり、傾聴している仲間には新しい経験で、自分のピアサポートにおける財産になっていくのではないでしょうか。

そう考えると、正しく、その両者はサポートを受ける側、提供する側とは画一的には決められないのではないかと思えて仕方がないのです。サポートの受け手と与え手は時には交代することがあるという流動性も大きな特徴なのではないでしょうか。多くの研究者はこの対等性、流動性を基本において、ピアサポートの支え合いということを考えています。(図1)

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また、当事者ががん患者会の中で援助者の役割を取ることによって「他者の役に立っている」という自尊感情を回復させることができ、同時に自分自身の課題を理解し、結果として「人を援助することで最も自分が援助を受ける」という「ヘルパー・セラピー原則」が存在するというのはよく言われることです。
これもある意味、ピアサポートの対等性を表した言葉ではないでしょうか。

さて、ここで上記の問題ですが、がん患者会における他者との関わりを通じて、個人の持っている力を回復し、援助を受ける側から援助者になっていく、というプロセスがあり、患者会の会員が段階的に成長していくこともがん患者会において特徴的なことであると思います。(図2)

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がん患者会においてすべての会員がピアサポートを提供することができるのではなく、お互い対等ではあるが、ピアサポートを受領する会員とピアサポートを提供する会員が存在していると考えるのが順当で、よって、入会して即座に上述した「ヘルパー・セラピー原則」が発揮されるものではないと考えるようになりました。

ここで私が注目するのは、ヒアリングの中で、会の中心的な役割を担う多くのメンバーから「自分のがんについて、またがんと共存していくことについて客観的に見られるようになりました。また、各々の仲間においては、治療方法が違い、がんに対する考え方や対処の仕方なども違うことが理解できるようになりました。」というコメントが語られたことです。がん患者会に参加する中で、ピアサポートを提供する側の会員に考え方の変化が見受けられることに強い関心を持ちました。

そこで、SHG(セルフ・ヘルプ・グループ)の中で「ピアサポートの受領」を得た会員が、「考え方の変化」を獲得して、次の「ピアサポートの提供」が可能な会員へと成長していくと仮定したのです。

このプロセスについては、次の回に詳細に説明したいと思います。

<2014/04/02 掲載>