HPVワクチン(子宮頸がんワクチン)について2011:03:28:23:16:33

公衆衛生事業としてのHPVワクチン(子宮頸がんワクチン)の課題:私見

1.HPVワクチンの効果の持続についての知見が確立していない
(ア)効果の持続性についての実証データはいまのところ8年ほどしかない(少なくとも10年ほどは有効と考える専門家が多いが、追加接種が必要と考えられている)。
2.ワクチン導入しても検診はやめられない。
(ア)ワクチンの有効率は高くても70%未満。日本ではもっと低くなる。
(イ)限定した型のHPV感染しか予防しないことから、現実問題として検診を廃止することはできず、結局双方の実施・維持コストがかかる。
3.中学生を対象に高い接種率を達成することには困難が予想される
(ア)中学生を対象に3回接種が必要なワクチンの接種率100%は不可能(11-12歳で1回だけ接種するDTワクチン2期接種でも接種率は70%程度)
(イ)効果がでるのが20年以上先のワクチンを、3回も受ける人口は多いとは思えない。
(ウ)学校での集団接種ができれば効果的であるが、過去のワクチン副反応問題の経過から多くの自治体の教育委員会は非協力的。また、厚労省は副反応の予防のため(または過去の判決における裁判所の判断のために)に、個別接種を推進しており、その方針を転換することは難しい
4.値段が高価である:3回接種で手技料金を含めて5万円
(ア)保健予算の増加が望めない現状では、保健分野の他の事業と競合する可能性
(私見:公衆衛生の目的の一つは、「最大多数の最大健康」であるので、HPVワクチンを定期にするのであれば、まず子供のワクチンを定期接種にすることが優先されるべき)
(イ)メディアで喧伝されている医療費削減効果についての報告には大きな問題がある(その根拠となる論文の著者も問題があることを事実上認めているが、公には論文を撤回していないために、婦人科医の間でも混乱が生じている)。

地方独立行政法人 大阪府立病院機構 大阪府立成人病センター
がん予防情報センター企画調査課
田中政宏