ゲノム情報の医療応用を文字通り推進するとともに、その際に懸念される差別などの問題を規制するための法律案。2018年に議員立法での成立を目指して検討が開始され、2020年の通常国会への提出が予定される。

国際的に法規制の流れ

 検討を進めているのは、超党派の「適切な遺伝医療を推進するための社会的環境の整備を目指す議員連盟」。ゲノム議連と略され、代表は元厚生労働大臣の尾辻秀久参議院議員だ。

 2019年10月の第200回厚生労働委員会では、自由民主党所属の衆議院議員で、医師の富岡務氏がその考え方について述べた。「遺伝情報を得ることはよいが、遺伝情報が判明することによる不都合を生じる可能性がある」として、倫理的な問題、差別や不利益な取扱いを受ける可能性も出てくると問題視。「世界的にも問題になりつつあるので、試行錯誤しながら今進んでいるのが我が国のゲノム医療の実態だろうと思っております。慎重の上にも慎重にやっていただきたい」と、ゲノム議連への協力を訴えた。

 ゲノム情報の医療応用をめぐって海外では、法的な規制をかける動きが一般的になってきている(関連記事:遺伝情報による差別をどう防止するか)。有名なのは、米国で2008年に施行された遺伝子情報差別禁止法(GINA)。同法律では遺伝情報に基づく就職や保険加入での差別を禁止している。さらに、カナダでも法律で差別を禁止。フランス、ドイツ、韓国では生命倫理や遺伝子関連検査に関する法律で差別を禁止。英国では、一般的なデータ保護に関わる法律の中で遺伝情報の保護を規定している。