第1回「これからの対策で減らせがん死亡」2011:05:28:18:42:10

大阪府立成人病センター がん予防情報センター長 津熊 秀明

近日公表予定の"楽しく学べるがんカルタ"には「これからの対策で減らせがん死亡」という読み札があります。これには、がんを社会全体で受け止め、克服していこう、また克服できるという意味が込められています。

米国では、それまで上昇を続けてきた全がん死亡率、正確には、人口の年齢構成の変化の影響を除いた年齢調整死亡率(標準人口10万人あたりの死亡数)ですが、1990年を境に減少に転じました。この全がん死亡率減少に大きく寄与したのが、肺がん死亡率の減少であり、さらに言えば、たばこ対策を推進して成人喫煙率の低下に成功した結果と考えられています。また、効果の証明されたマンモグラフィーによる乳がん検診や擦過細胞診による子宮頸がん検診を社会に広めた成果も加わっています。

一方、わが国はどうでしょう? わが国の全がん年齢調整死亡率もゆるやかな減少傾向にあります。しかしこれは、胃がんと肝がんのりかん率が大きく減少したことが主な要因であることが分かっています。胃がんりかん率の減少には食生活や衛生状態の改善、肝がんにはC型肝炎ウイルス陽性者の多い世代(1930-34年生まれにピーク)の方々の動向が、それぞれ密接に関連しており、がん予防対策の直接の効果とは見なせませんでした。

がん死亡率の減少を確実にする鍵は何か? 先ずはたばこ対策です。わが国でも肺がんががん死亡の第1位になっていますし、たばこは、肺だけでなく多くの部位のがん、循環器疾患の発生率も高めます。成人喫煙率の低下に向けた禁煙サポートやたばこの煙にさらされない環境の整備を強力に進めることが重要です。

次に肝炎ウイルス対策です。肝がんは患者数が多く肺がんと並んで治療困難ながんの代表です。ただしウイルス性肝炎に対する治療の進歩のおかげで、肝がん発生をかなり予防できるようになりました。肝炎ウイルスチェックの未受診者を減らし、陽性者には適応を見極めつつ抗ウイルス治療を受けて頂くことです。

効果の証明されたがん検診を正しく受けて頂き、そして、標準的ながんの診断・治療をひとしく受けて頂く体制を整備することも、もちろんがん対策の大切な柱です。これら4分野の施策を確実に進めてゆくことこそが、わが国でがん死亡を減らす最も重要な戦略です。